お腹が空きました。
「さてさて、今日はどこに連れて行ってくれるんだ?」
「さてさて、どこでしょう?」
二人は車を使わず、歩いて駅に向かう。
そう、今日は珍しく紗耶がエスコート役なのだ。
無事、杉崎がこの前の問題を解決したお祝いもかねて今回はスイーツ巡りの旅に彼を振り回す予定なのである。
紗耶はもう一度杉崎を見上げた。
…かっこいい。
『カツラは止めろ。』と真顔で止められたので、渋々そのままの髪を少し若い目にいじらせてもらったのだが。
「(もともと整った顔立ちだからよく似合う。)」
ほれぼれと紗耶が見惚れていると、杉崎はその視線に気付き、ニヤリと笑う。
「なんだ?見とれてるのか?」
「え?はい。」
なんでわかったんだろうと、紗耶がきょとんと答えると、杉崎は意表を突かれたようにしばらく口を開けたまま黙った。
「…杉崎さん?」
「なんでもねぇよっ。」
右手で顔を覆うような動作に、あれ?あれれれ?もしかして照れてる?と紗耶は顔を覗き込む。
ふいっと顔をそらす杉崎に、紗耶はニコニコ嬉しそうに微笑んだ。