お腹が空きました。
…なんだか最近、杉崎さん丸くなったなぁ、などと思いながら紗耶またパクッとモンブランを口に運ぶ。
杉崎の移動は、新しく設立された部署に決まったようだった。
「うちの会社も色んな所に手を広げてますねー。」
簡単に言うと、今まで別業者にまるごと頼んでいた雑誌の付属品を自分達で作っちゃおうかみたいな部署で。
「場所も編集さんの隣になるみたいだし。すっごく面白そうですね!作る側なんて!」
「そう考えればまぁ、そうだな。…だが今度は編集と工場と読者の三面板挟みだ。」
若干げっそりしながら杉崎はブラックを傾ける。
なんであんな威勢のいいメンツばっかり集めたんだ…まとめるのがどうのこうの…とブツブツ呟きながら杉崎は軽く頭を抱えた。
「あぁあの。部長が言ってた奴どうなりました…っ?」
ズーンと暗くなり始めた杉崎に紗耶は慌てて尋ねる。
「あ?あぁ、あれな。」
“杉崎、お前部署移動する前に溜まりに溜まった有給使ってから行けよ”
そう思い出したように遠い席の部長から声が飛んで来たのは二日前。
ああ、はい。と低い声で静かに返事をした杉崎だったが、しばらく考え込むように首を傾げていたのを紗耶は覚えている。
「一週間近くあるしな、…色々考えたんだが、久しぶりに両親にあってこようかと思う。」
「ご両親…って、確か」
「ああ、フランスだ。」