お腹が空きました。





おわぁぁ!


「来ましたよーっ期間限定チョコずくし生チョコパフェーーっ」

コトンと置かれた美しくデコレーションされている魅惑のパフェに紗耶は目をキラキラと輝かせる。

「…。」


「うわわわぁぁ!ベルギー産生チョコとは贅沢な…っアイスもコーンフレークもトッピングの四角い生チョコも生クリーム以外ぜんぶチョコ味っ。オールチョコなんてチョコ好きには夢のようなパフェですなぁっ!」

興奮し、思わず心の声をだだ漏れにしてしまっている紗耶を、優子は出鼻を挫かれたように黙って見つめた。

「…。」

サクッ、ふわりとスプーンを慎重に差し込み、出来るだけ、黒くてキラキラしている美しいドレスのような塔を崩さないようにすくい上げる。

ゆっくりと、待ちに待っている口の中に運び、紗耶はその冷たくて甘くてそしてほろ苦い味わいを一心に堪能した。


「…んーーーーっ!!最高!」



「…室内さんって、食べてる時いつもこんなにうるさいんですか?」


全てが馬鹿馬鹿しくなってしまったような呆れかえった物言いに、紗耶はふと現実に引き戻される。


「あ、…えっと、ごめん。」

小声で謝りながらも、紗耶はまたパクッとパフェを口に運んだ。

そんな様子の紗耶を見つめ、優子はとうとう張り詰めていた背筋を緩める。

肘をついた手にぽてりと顎を乗せ、窓の外をぼんやりと眺めだした彼女に、紗耶はドンドンスプーンを動かしながらぽつりと質問してみた。


「…。」

「…あのさ、良介…君と、なんかあったの?」

「…。」


「…。」


目が合わないまま、返答のない問いだけが宙を漂う。

諦めてまたスプーンを進めようとした紗耶の耳に、ぼそりと優子の声が飛び込んで来た。


「室内さんって…。」


「え、うん。」


「食べるの、好きですよね。」

「うん。かなり。」

…はぁ。

大きな大きなため息をつき、優子は下を向く。

え、どうし…たんだろ…。

紗耶は戸惑いながら、優子のさらりと流れる長い髪を見つめた。





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