お腹が空きました。
「私はダメなんです。」
「ん、え?」
紗耶は手を止め、少し表情に動きが出て来た彼女に目を見開く。
「食べれないんです。
いつも小とかミニとか頼んでもギリギリ食べれるかどうかで、一般的な量とされているものを全部胃に収めることができないんです。
そもそも食べるということ自体、ただの義務のような…。
身体が動かなくなるから仕方なしに食べるというか…とにかく食べるという行為に好きも嫌いもないんです。」
「…うん。」
突然遠いところを見ながら語り出した優子を見つめ、紗耶は静かに頷いた。
「…良介は、そんな私を見ても、気を使ってくれてそんな所も好きだと言ってくれます。
それだけじゃないんです。
この頬骨もモデル見たいで素敵だとか、人前で緊張してしまってしゃべれなくなる時も、おしとやかで可愛いだとか。」
「う、うん。」
ん?のろけ?のろけを聞かされているのか?
紗耶は思い詰めた表情をする彼女にぎこちなく頷く。
「でも違うんです!違うんです…。
本当は良介…よく食べる子が好きなんです。
こんな、かくかくした顔じゃなくって室内さんみたいにシルエットが丸いたまごみたいな可愛い感じが好きなんです。
雰囲気だって、私みたいな根暗な奴じゃなくて、む、室内さんみたい…な……。」
ぐすっと涙目になり、眉を悲しさに歪める優子に紗耶は慌てた。
「ゆっゆうちゃん?!」
心労からか、こけてしまっている頬を押さえ、優子は今までつもり重なった不安をこぼさないように、歯を震わせ耐える。
そんな優子を見て紗耶も一瞬辛そうに眉を歪めた。
なにがこの子をこんなに苦しめているのだろう。こんな綺麗な子なのに、何故そんなに思い詰めてしまったのだろう。