お腹が空きました。
全力で元彼を呪いながら紗耶はぎこちない笑顔を作る。
どうにかコトをこの場で収めなければ。
小さな火種が大火事になってしまう。
「…多分忘れてただけじゃないかなー?だいぶ前だし、大したようでもなかったし。」
「私と喧嘩をした時に、前の彼女と連絡をとる、ですよ。…本当に大した用事ではなかったんですか?なにか…あったんじゃないですか?」
す…っ、と忘れていた怒りが込み上げたように彼女の頬から赤みが消える。
ひいっ!その顔怖いよーっ!
冷たい表情に紗耶はまた慌てながら両手を大きく振った。
「ないないない、
本当になにもない。
誓ってない。
第一私、か……彼氏いるし。」
自分で言ったはずの“彼氏”という単語で、馬鹿みたいに紗耶はポッと頬を染める。
彼氏だって!
頬に両手を当て、今だに何故か照れてしまう紗耶を優子は少したじろきながら見つめた。
「まだ名前ですら呼べてないんだけどね。
あはは。
あのね、実はね、壱悟さんっていうんだけどね、イチゴだよ!
すごい可愛いでしょ?
でも顔こんな怖いの。
シュッとした赤鬼みたいな。
狼とかシベリアンハスキーにもにてるかなぁ。
その3つを足して2で割って整えた感じなんだよねー。あ、分かる?」
「…や、ちょっと分かりません。」
ふんっと杉崎の顔真似をする紗耶に、優子はぼそりとそう伝えた。