お腹が空きました。
「それで、サークルの子達は元気?」
「はい、室内さんが一度も顔をだされてないのを先輩達寂しがってました。」
「ああ、春は仕事覚えるのに必死でね。私あんまりてきぱき出来ないし…。うん、でもだいぶ落ち着いて来たし、そろそろ遊びに行こ…」
ガチャンっと。
荒々しくファミレスの扉が開き、その近づいてくる足音は妙に地面に染み込んで、
「優。」
…本当に今日は、厄日以外考えられない。
怒りが込められたその響きに、紗耶と優子は目の前の人物を見上げ会話をやめる。
空気の温度がまた ざ…っと下がって、紗耶は完璧シリアスモードな彼にそっと頭を抱えた。
…タイミング悪い。
優子は良介の冷たい表情にふるふるとおびえ、自分の手と手をぎゅっと握り合わせる。
「サークル。遅れて来たちあきが妙に挙動不審だったから、とっ捕まえて色々聞いたんだけど。なにこれ。どういうこと。」
あーー…、キレてる。
紗耶は無表情で淡々とまくしたてる良介をなんとか なだめようと口を開けた。
「あのね、良…」
「どうしちゃったんだよ、優、最近なんかおかしいよ。」
冷たい言葉がピリピリと皮膚を切る。
良介は立ったまま ちらりと紗耶を見、またすぐ優子に冷たい視線を戻して口を開いた。
「紗耶なんか呼び出したりして…。なんでそんなにヒステリックになってんだよっ。わけわかんねぇよ。」
あ、ちょっと、なんかやばいかも。
「ちょちょっと…っ」
紗耶は嫌な予感がして、がたりと立ち上がろうとする。
多分、それ以上言ったらだめだ。
絶対、だめだ。
「だから、だからっ前の奴にも重いって言われ…
「ちょっと待ちなさいってーーー!!!」
紗耶は殴る勢いで思いっきりバシンっと良介の口を塞いだ。
それがあまりにも大きな音だったので、優子や周りの客は息を呑み目を丸くする。
紗耶は珍しく目をつり上げて静かに怒鳴った。
「はいっ良介…さんはそこに座る。ほら、早く。」
「え。」
「す わ る 。」
ビシっと指を刺され、良介はヒリヒリする口を押さえながら、おずおずと優子の隣に座った。
それを見届け、紗耶も腰を下ろして良介に低い声で言う。
「まず謝りなさい。」
「え、な、なんで。」
「なんでじゃないよ!頭ごなしに理由も聞かず、女の子に酷い事を言おうとしたことを謝りなさいっ。
もう…。カッっとなってた事は分かるけど。
そもそも良介が適当なこと言うのが悪いんだからねっ。」