お腹が空きました。
紗耶は腕を組みながら良介にザッと説明した。
優子が普段から前の彼女の影を気にしていた事。
不安で仕方なかった事。
そして良介の適当なウソ。
「…というわけで、良介が悪い!」
良介は頭をポリポリ掻きながら小声でこぼす。
「…俺そんなこといったっけ。」
「適当っ!ホントに適当っ。」
紗耶はハァとため息をつきながら優子と目を合わす。
優子はホッとしたのか、泣きそうな顔で
かすかに微笑み返した。
ひでぇなぁーなどと凹む良介に、紗耶は改めてまっすぐ向き直る。
「あのね、優ちゃんは良介の太陽みたいな笑顔が好きなんだって。
柔らかい優しいところが好きなんだって。
さっきみたいな適当なところがあっても、
大好きなんだって。」
ゆっくりと、はっきりそう伝える紗耶の言葉に、良介は目を見開いて優子を見つめた。
「優ちゃ…。」
「…良介、優ちゃんになにかいうことは?」
ちゃんと謝って。
そんな意味で紗耶はそう言ったのだが。
「俺も、優ちゃんが世界で一番大好きです。」
ペコッとそう頭を下げ、良介は隣に座る優子の手をギュッと握った。
「あれ、…ははは。」
あ、ごめんねじゃないんだ、と紗耶は笑う。
優子の、涙目の晴れやかな笑顔を見て、紗耶はやっと完全に気を抜き 立ち上がった。
「はぁー。うん。よし!じゃあ私帰るね。パフェも食べたし。」
ふいをつかれたように見上げる二人を見下ろし、紗耶はうん、と首を動かす。
「あ、そうそう。良介、やっぱり良介は“恋人論外友人以下”。大事な彼女をちょっとでも不安にさせたんデスから、もう同窓会の誘いとか結婚式とかでも連絡してこないでねー。」
「あ、あの。」
ガタリと優子が立ち上がる。
ん?と振り返る紗耶に、優子は体の前で手を小さく握りながら言った。
「大丈夫です。私もう気にしませんから。」
「ああ、ううんー。本当にそれでいいの。こっちにも、いるらしいから。しかも『かなり』な人。」
クスクス嬉しそうに笑う紗耶に二人は首を傾げる。
紗耶はそんな良介と優子に手を振りファミレスを後にした。