お腹が空きました。
…
牛野との通話後、ドサッとキューブ型の食パンを皿に戻し、紗耶は焦りながら携帯を操作する。
『…あのねぇ、杉崎乗せて俺の車で会社から杉崎んちに行く途中で、…見ちゃったんだよねー…。』
紗耶は杉崎の番号を素早くタップした。
『まぁ一瞬だったんだけど、…紗耶ちゃんが男と居るのさ。
え?他に女の子居たの?
ああ、もしかしたら柱で見えなかったのかもしれない。
でね、なんか、ちょうど紗耶ちゃんが立ち上がってその男に抱きつきに行ってる?って感じに見えちゃってね。
あ、いや抱き付いた所を見たわけじゃないんだけ……、え?あ、違うの?ああ、やっぱりなんか変だなぁと思ってたんだよ。
…うん、…うん、あぁ、やっぱりそんな感じだったわけだね。
いやーすごいタイミングで目撃しちゃったんだ俺ら。
え?あ、そうだよ。杉崎もバッチリ見てる。
うん、だからあいつからなんか連絡あった?え?ないの?あっれ、おかしいな。
何も言わなかったけど、顔色悪かったからさ。
あ、うん。あれだったら紗耶ちゃんから連絡した方がいいよ。
誤解は早めに解かなくちゃ、あとあと大変な事になったりするしねー。うん、うん、じゃあね。』
紗耶は虚しく続く携帯越しのコールにたらりと冷や汗を流す。
…出ない。
杉崎さん、飛行機の中なのかな。
紗耶は一旦携帯を切り、どさっと椅子に座り直して頭を抱えた。