お腹が空きました。


「あれか、フランスって遠いんだっけ…。」

飛行機の中ってそういえば電波届かなかったっけどうだったっけ?とりあえずフランスまでどれくらいかかるんだろう?


紗耶はブツブツそんな事を呟きながら背中を丸め携帯で調べ始めた。

「んー…と、えー…、……!」

13時間…!!

なんと…!と紗耶はベッドの上で歌舞伎役者のように飛び跳ねる。

紗耶は諦めた目をしてチラリとサーモンピンク色の壁掛け時計を見た。


明日の7時かあ。

杉崎がフランスにつく時間を頭の中で計算し、紗耶はまたぼふっと大きめのマクラに倒れ込む。

「まー、距離が距離だもんねー…。」

待つか…。

紗耶は悶々としながら、一人布団の中に疼くまった。







ポロロロンと昼を知らせる小さなチャイムが社内に響き、由美は半分目が死んでる紗耶を引きずって、社員食堂で昼食を頼む。

「返ってきませんよーー…。」

「はいはい。」

ぐったりと机に突っ伏する紗耶に由美はため息交じりに返事をした。


「…時差で寝てるか、フランス満喫してて携帯見てないんじゃない?」

ぱくっと由美は鮭を口に運ぶ。


「そうなのかなぁ。」

紗耶は鼻の隣にある鮭定食の匂いを嗅ぎながら由美を見上げた。

…うん。そうなのかもしれない。

もともとメールとかしない人だし。

それと、携帯不携帯の可能性、大だな。

机に突っ伏したままの紗耶に由美が箸で指さす。

「とりあえず、早く食べちゃいな。冷めるよ。」

「…うん。」

紗耶はやっとのこと体を起こして味噌汁を吸い、まつ毛を伏せたまま、はぁ、と重たい息を吐いた。



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