お腹が空きました。




…バック重い。



紗耶は体を引きずるようにして今日も出勤する。

結構な顔色の悪さに周りの人間は紗耶から思わず一歩引いた。

「由美ちゃんおはよ…。」

「紗耶…だ、大丈夫?」

大丈夫、と力なく答える紗耶に由美はぐっと眉を寄せた。

「…なかったわけ?連絡…。」

「うーん、まぁ、そです。あはは…。」

「……。」

パソコンのスイッチを入れる紗耶の肩を、無言でぽんぽんと叩きながら、由美は頑張って声を張る。

「その内あっけなくポンっと連絡くるよ。ね。とりあえず今日はケーキ食べ放題でも行こう。うん。」

ハハハと無理やり笑う由美に、紗耶は申し訳なさそうに眉を八の字にした。

「ありがとう由美ちゃん。…でも、今日はいいや…。」

「ん?」

「食欲ない…。」



「…⁈」



食欲…ない⁈


ガタリと椅子を鳴らしながら由美は驚愕する。

あの紗耶が…、

彼氏と別れても食欲だけはなくならなかった紗耶が…、


「ま、ままマジで言ってんの…?」

「…?」

怯える由美に紗耶は力なく首を傾げた。


「ねぇ、あんた本当に大丈夫なの?」

そんな由美の言葉に、紗耶は笑う。

「ぇえ…?大丈夫大丈夫。」

大丈夫、大丈夫…


大丈夫。


紗耶自身、そう自分に言い聞かせながら、無理やり腕を上げて仕事の書類を広げた。

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