お腹が空きました。
◆
…バック重い。
紗耶は体を引きずるようにして今日も出勤する。
結構な顔色の悪さに周りの人間は紗耶から思わず一歩引いた。
「由美ちゃんおはよ…。」
「紗耶…だ、大丈夫?」
大丈夫、と力なく答える紗耶に由美はぐっと眉を寄せた。
「…なかったわけ?連絡…。」
「うーん、まぁ、そです。あはは…。」
「……。」
パソコンのスイッチを入れる紗耶の肩を、無言でぽんぽんと叩きながら、由美は頑張って声を張る。
「その内あっけなくポンっと連絡くるよ。ね。とりあえず今日はケーキ食べ放題でも行こう。うん。」
ハハハと無理やり笑う由美に、紗耶は申し訳なさそうに眉を八の字にした。
「ありがとう由美ちゃん。…でも、今日はいいや…。」
「ん?」
「食欲ない…。」
「…⁈」
食欲…ない⁈
ガタリと椅子を鳴らしながら由美は驚愕する。
あの紗耶が…、
彼氏と別れても食欲だけはなくならなかった紗耶が…、
「ま、ままマジで言ってんの…?」
「…?」
怯える由美に紗耶は力なく首を傾げた。
「ねぇ、あんた本当に大丈夫なの?」
そんな由美の言葉に、紗耶は笑う。
「ぇえ…?大丈夫大丈夫。」
大丈夫、大丈夫…
大丈夫。
紗耶自身、そう自分に言い聞かせながら、無理やり腕を上げて仕事の書類を広げた。