お腹が空きました。

す、



杉崎さん携帯忘れて行ってるーーーっ‼︎


紗耶はキッチンの壁に手を着きながら心の中で絶叫する。

ピカ、ピカ、と可愛く光る携帯の点滅に、紗耶はズルズルと力なく膝をついた。


ま、

マジかあぁぁぁぁ…


「…そりゃ、返事来ませんよねー…。」

キッチンの上の台にポツンと置かれた黒いそれ。

紗耶はゆっくりと立ち上がり、ポリポリと頭をかく。

なんとなく、紗耶は自分の携帯で「あ」とだけ打ち込んで送信してみた。

ピロリロリン

「…だよね、そうなるよね。」

また目の前の黒い携帯が軽やかに受信する。

なんだ…。

杉崎さん、読んでないのか。

多分荷物を取りに来た時にわすれたんだな…。

紗耶はアハハとカラ笑いしながら、気が抜けたように机に座り直した。

なんだぁ、そっかぁ、読んでないのか…。

今、何送っても、杉崎さんには読めないのかぁ…。

「…。」


しばらく黙った後、紗耶は一人、携帯をタップする。


ピロリロリン

『杉崎さん、携帯忘れてますよー。日本に。』


ピロリロリン

『杉崎さんの……おバカーっ』

ピロリロリン

『すいません、嘘です。』


「はぁ、なにやってるんだろう私…。」

100%返事の来ないメールをイタズラに送信し、紗耶は机にだらりと突っ伏した。

「おーい…、杉崎さー…ん…。」


ピロリロリン



『早く帰って来て下さい…。』




< 310 / 324 >

この作品をシェア

pagetop