お腹が空きました。
右から伸びてきた細い腕を目でたどると、紗耶と同じように困ったような顔をして微笑んでいる女性の顔にたどり着いた。
ぴったり同時だったため、一瞬どうしていいか迷う。
…はっ、
そしてその後すぐに紗耶は腕を引っ込めわたわたとティッシュを右へ寄せた。
「あ、あの、どうぞ…。」
「えっ、あらやだ、悪いわ。どうぞどうぞ。」
「ぇえ、いえ、お気になさらず、」
「私の方がちょっと遅かったし、若いんだから遠慮しないで、」
ズリズリ、ズリズリ。
台の上を右へ左へすべる箱ティシュ…。
「いえいえ、そんなことないですよ。どうぞどう…あ!!」
びくっと長いポニーテールを揺らし、女性は大声を出した紗耶をぱちくりと見つめた。
「あの!店員のお姉さんですよね!赤のギンガムチェックのケーキ屋さんの!!」