お腹が空きました。
杉崎は反射的にさっと買い物袋を後ろに隠した。
そんな様子をチラッと見た“お姉さん”はこっそりと笑う。
「まぁいいや。いっちゃん、とりあえず私も家まで送って。」
「はぁ?!てめーで来たんだからてめーで帰っ…」
「いっちゃんの小学校の時の写真集、紗耶ちゃんにみせちゃおっかなぁーー?」
「…っ。」
頭を抱えた杉崎は、しぶしぶ自分の車へと歩き出した。
その後ろで子供のようにぶくくくっっと、“お姉さん”が笑う。
いたずらっこみたいな瞳と目が会い、紗耶もクスクス楽しそうに笑った。
◆
…
「改めまして、私、杉崎亜栗〈あぐり〉です。さっきも言ったけど、いっちゃんの実の姉になりまーす。年齢は秘密!お婿さんいただいてケーキ屋やってまーす。で、で?紗耶ちゃんはやっぱりアレ?いっちゃんの彼女なの?」
「ちげーよ!さっきからうるせーよ姉貴!」
ハンドルを握りながら杉崎が後ろに吠える。
紗耶の隣に座る亜栗は始終ニコニコしていて、店での大人っぽい印象とはまた全然違って見えた。
兄弟、と、いわれてみると、確かに二人ともどことなくシベリアンハスキーに似ている気がする。