お腹が空きました。


杉崎は反射的にさっと買い物袋を後ろに隠した。


そんな様子をチラッと見た“お姉さん”はこっそりと笑う。


「まぁいいや。いっちゃん、とりあえず私も家まで送って。」


「はぁ?!てめーで来たんだからてめーで帰っ…」


「いっちゃんの小学校の時の写真集、紗耶ちゃんにみせちゃおっかなぁーー?」


「…っ。」


頭を抱えた杉崎は、しぶしぶ自分の車へと歩き出した。


その後ろで子供のようにぶくくくっっと、“お姉さん”が笑う。

いたずらっこみたいな瞳と目が会い、紗耶もクスクス楽しそうに笑った。







「改めまして、私、杉崎亜栗〈あぐり〉です。さっきも言ったけど、いっちゃんの実の姉になりまーす。年齢は秘密!お婿さんいただいてケーキ屋やってまーす。で、で?紗耶ちゃんはやっぱりアレ?いっちゃんの彼女なの?」


「ちげーよ!さっきからうるせーよ姉貴!」


ハンドルを握りながら杉崎が後ろに吠える。


紗耶の隣に座る亜栗は始終ニコニコしていて、店での大人っぽい印象とはまた全然違って見えた。


兄弟、と、いわれてみると、確かに二人ともどことなくシベリアンハスキーに似ている気がする。


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