お腹が空きました。
「ようこそー!我がフランボワーズへ」
亜栗が手のひらを上に向け、お出迎えのポーズを取りながら紗耶を車から引っ張り出す。
“フランボワーズ”
改装でもしたのだろうか。
そうフランス語でかかれたお洒落な看板だけが、やけに年期がはいっていた。
「…っていっても、もう今日はシャッターしめちゃったんだけどね。」
ふわふわのポニーテールを揺らしながら亜栗がへへっと笑った。
「まぁとりあえず入って入って。」
亜栗が指差すシャッターの隣には、従業員専用の扉があり、杉崎はもうそちらに姿を消していた。
杉崎が消えた扉に向かって亜栗は笑いながらため息をつき、紗耶に微笑みかける。
「あの子、格好つけマンでしょ?」
「あ、杉崎さんですか?…んー、別の部署の女性社員からは人気なんですけど…、同じ定期入金管理係の女の子達には恐れられてますねー。」
なんせ鬼軍曹さまですから。