恋……スル?-菅野 聡 編-
――それから午後の事
「梅津、クレームだ」
「は?」
相変わらず依頼書を熟読しながら、イメージを描いている時だった。
こういう仕事をしていて一番聞きたくない言葉ベスト3に入るのが、この“クレーム”だろうな。
「…私に、ですか…?」
私は眉を潜めながら、デスクから立ち上がった。
だいたいこの仕事は、専務がデジタル化した写真を依頼主に見せて了解を得てから制作している。
もしデザインに気に入らない点があるとするならば、写真を見せた時に言ってくるものなんだけど…。
「既に店の方でお客様がお待ちだ。
どうにもならなそうなら俺も出て一緒に頭を下げるが、まずはしっかり話を聞いてさしあげろ」
「はい…」
どうやら私個人を指名してのクレームみたい。
こわいけど…でもこれを受け入れるのも仕事だもの、怖じ気づいてる場合じゃないわ。