複雑な感情、365日。
入学・就任

入学



紺色のブレザーに身を包み、
通学用かばんを手にした
少女が一人。

桜の花びらが
睫毛に触れそうな程近くを
舞っていく。



今日から中学生。


って言っても、
何が変わるってわけじゃないけど。

学校行って勉強して家帰って終わり。

何も変わんない平凡な日々。

唯一、今までと違うのが部活動。

入っても入んなくてもよくね?
みたいな。

「―――紗月っ」

バシッと背中に少々強めの衝撃が。

叩かれた所を擦りつつ振り返ると

「イッ……!涼香(すずか)…っ」

「すずかじゃないですー。
涼香(りょうか)ですぅー」

同じマンションの2階に住む
平野涼香。

因みにあたしは4階。


まぁ、結構仲は良い方。

「叩くなし」

「だって先行っちゃうんだもん」

そう言って、あたしの隣に
ペースを合わせて歩く。

身長差の所為か、
ちょっと早歩きになっている。

「始業式午後からだし、
あんたご飯食ってると思ったの!」

「ふ、ふんっ!
とっくに食べ終わってたもんねー」

「あー、そーかいそーかい」

こんなくだらない会話をしつつ
学校に到着。

昇降口前の長机に
A4の紙が置いてあった。

クラス表だ。

「紗月ぃ、あたしのも取ってー」

校門入ったとこから
自分のペースで歩いた涼香が
後ろからクラス表をご所望だ。

仕方なく2枚とって
涼香が既にいる昇降口へ向かう。
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