柚子物語
父親は意識を失ってしまった。
まあ無理もない死んでも可笑しくない状況である。
ゆずは気を失った父親の顔を撫でてみた。
するとミシミシと人が廊下を歩く音が部屋の外から聞こえる。
ゆずは恐くなり、近くにある血の付いた花瓶を手に取る。
うさぎが誰だと伺うと低く年老いた心に響く声がゆずの胸を叩く。
声は父親を殺せとせがんでいる。
ゆずはその声を聞いて首を横に大きく振った。
ゆずは部屋の外にまでちゃんと聞こえるように声を少し張り上げてこう言う。
私はただお父さんに娘として愛してほしいだけだと…。
すると目の前にいた人の形をしたうさぎはみるまるやせ細っていき色は褐色になり目は開ききり白目をむき最後には床に倒れ干からびてしまった。
うさぎが倒れた瞬間腕の肉が落ちた父親は傷口から蛆のような虫がいっきにたかったのだが父親の身体をそれを吸収しもとの元気に父親に戻ってしまった。
せっかく気絶させた父親が元気を取り戻し何事もなかったように先ほどの続きを営み始めた。
ああまた繰り返しなのか…っとゆずは思った。
無抵抗のまま気が付けば全ての行程が済んでいた。
ゆずはベッドの上で涙をこらえながら次の日の朝をむかえた。