わたしのピンクの錠剤
 
 ベッドの中

 ベッドの中

 ベッドの中

    ・
    ・

その言葉に激しく反応し、

私の身体は震えだした。
 




すぐにおかしいと感じた。

いつもの達哉じゃない。


どこが違う?と聞かれても、何となく、としか答えようがない。

でも、間違いなく目の前の達哉は達哉じゃなかった。



「あなた、哀哉なの?」


私はベッドから抜け出した。

「なに変なこと、言ってんだい。俺は哀哉なんかじゃないよ」


達哉は哀哉のことをこんな風には言わない。

私は哀哉だと確信した。


「どういうつもりなの。私はあなたと結婚したんじゃない。達哉と結婚したのよ」


「落ち着けよ。俺は哀哉じゃないって・・・」

あくまで哀哉じゃないと偽物の達哉は言い張る。

 

その時、達哉の視線の焦点が、私の瞳の表面から瞳の奥へと移った。

全てを見透かすようなこの感じ。

哀哉から達哉に変わった瞬間だった。


私はほっとしたと同時に涙があふれてきた。

「ひどい、非道い。どうして・・」

私は達哉の胸を両手で叩いた。

「すまない」


達哉は包み込むように私を抱きしめる。

それはあくまでも優しい達哉。


でも、私にはその取り繕うような優しさが不安でたまらなかった。


 
< 193 / 264 >

この作品をシェア

pagetop