わたしのピンクの錠剤
 
「あいかは特別だから」

幼いわたしが辛い思いをする度に親父はそう言った。


特別だから、わたしは公園で遊ばなかったの?

特別だから、わたしは幼稚園にも保育園にも行かなかったの?


やっぱり特別だから、お母さんのことを何も知らないの?



「お母さんと入れ替わりで生まれてきた」


親父に聞いても、そう繰り返すばかりで、それ以上何も教えてくれなかった。


ものごころ付いた頃には、親父と二人っきりで狭いアパートに暮らしていたし、親父の言うことが全てだった。

知らないことが当たり前で、知らないことを尋ねてもいいなんて、小学生になるまで知らなかった。
 

 
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