わたしのピンクの錠剤
電話
「あのぉ、すいません。藤島数子さんって、知りませんか」
「ああ、母さん?いま、出かけてるけど、どちらさん?戻ったら、電話させよっか?」
「い、いえ、いいです。また、電話します」
慌てて電話を切った。
「あぁ、どうしよ。生きてる。生きてるよぉ」
親父のバカ。
嘘つき。
お母さん、死んでないじゃん。
自分でも頬が緩んでいるのがわかる。
お母さんが生きている。
嬉しくてうれしくて、そう考えるだけで胸がいっぱいになった。
ふと、気付いた。
さっきの人はお姉さん?
そう思うと、無性に咽が渇いてきた。
口の中から胸のあたりまで、からっからに渇いていた。