幸せまでの距離
「メイ、焦らないで?」

ミズキはメイの背中をなでる。

メイはミズキの肩に顔をうずめた。

気持ちが乱れた時にこうしている と、不思議と涙もおさまる。

メイにとって、女性の……ミズキの 優しさが、何よりの精神安定剤だっ た。

メイは《星崎メイ》になったこと を、とても幸せだと思っている。

あのまま《穂積メイ》で居たら、 もっと深い傷を負っていたのは明ら か。

星崎家に来たことで、以前の自分に はない感情もたくさん生まれた。

母が作る料理のぬくもりと、体にし み渡る味。

父の存在が頼もしいという心強さ。

だが、目まぐるしい環境変化の中で メイは、自分も早く変化したいと願 い、それがスムーズにいかず焦って いた。

リクにあるもの。

子供を大切にできる両親。 お金。 居心地の良い家。

メイ自身もそれを手に入れられさえ すれば、今までの荒れた自分を捨て て、綺麗な自分になれると期待して いたのに。

「心の底にあるもんは、昔のまま だ……。

お金とか家族の良し悪しじゃなく て……」

リクの内面の純粋さに嫉妬してしま う。

リクを見ていると、自分の汚さが浮 き彫りにされてみじめな気持ちにな る。

「こんなんじゃ、前の自分と何も変 わんないじゃんか……」

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