幸せまでの距離
「枯れかけのチューリップにあわて て水をあげても、すぐには元通りに ならないでしょ?

土を変えたって、枯れちゃうことも ある」

「じゃあ、私もこのままってことに なるじゃん」

メイはそれが当然のように言う。

自分の人生を頑張って生きたいと思 うのと同じくらい、『何をやっても うまくいくわけない』と、あきらめ の気持ちもある。

ミズキは穏やかにそれを否定した。

「チューリップには球根があるの。

一度枯れてしまっても、根気よく栄 養を与えれば、球根から新しい芽が 出て、また花を咲かすことができ る。

人の心だって同じ。

傷ついて、自分の葉や花が散ってし まっても、心の奥に球根は残ってる の。

栄養を与えたら、絶対また、違う自 分に出会えるんだよ」

ミズキの言葉は、メイの心に鮮やか に響いた。

今は暗くて光のない洞窟(どうく つ)にいるのだとしても、来年、再 来年には暖かい恵の畑にたどり着け るかもしれない。希望が湧く。

「花って他にも色々あるのに、なん でわざわざチューリップに例えた の?」

メイのささやかな疑問に、ミズキは サラリと答えた。

「チューリップは、マナが好きな花 なんだよ。

今では私も大好きなんだ」

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