幸せまでの距離
メイに会いに来てみたものの、すで に日をまたぎそうな時間。

数分後には明日になってしまう。

いくら温厚な大人だとはいえ、ミズ キとメイの母・菜月は、こんな時間 にやってきたリクを非常識だと不愉 快に思うかもしれない。

“やっぱり、今日はやめとこ……”

インターホンを押そうとした指を そっとひっこめ、踵(きびす)を返 すと、

「…………ニャー」

「ん?」

夜に沈んだ住宅地に、小さく響く動 物の鳴き声。

「ネコ?」

周囲を見渡してみるが誰もいない。

その鳴き声は、壁を隔てた向こう側 から何度かに分けて聞こえてくる。

「何も食べてないの?」

メイの声だ。弱き者に投げかけられ る柔らかい口調。

リクは緊張と喜びを足して2で割っ たような心持ちで、声のする裏庭へ と進む。

玄関前から左へ回ると、星崎家の住 宅を囲むように、ゆとりある芝生が 広がっていた。

その角に、しゃがんでいるメイの姿 がある。

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