幸せまでの距離
主婦達は皆、菜月と同世代かそれよ り上の年層の女性ばかりだ。

ミズキは、一度は彼女達の横を通り 過ぎようとしたが、「メイがこの噂 を耳にしたら……」と考えたら、や はり黙っていられなくなった。

生まれた頃から不安定な人間関係の 中で育ったメイに、家庭の安らぎを 知ってほしかった。

大人の汚い部分ばかり見て世の中に 絶望しているメイに、優しい大人も いるのだと教えたかった。

“そのために、私だってやれること をやってみせる!”

ミズキは両足に力を入れると、主婦 達に声をかけた。

「あの……!」

「あら、ミズキちゃん。なぁに ~?」

猫なで声と満面の笑みで応えたの は、噂話好きだと悪評のある50代 の主婦。

《天使のような悪魔の笑顔》とは、 こういう人のこういう対応を表すの だろうと思わずにはいられない。

ミズキは普段通りの話し方を心が け、

「私のことは何と言われてもかまい ません。

でも、メイにだけはそんな目を向け ないであげて下さい。

私達家族は、たしかにメイと血の繋 がりはありません。そのことであな た達を困惑させてしまったかもしれ ませんが、それでもメイは、私達の 大事な家族です。

あと、父は母を裏切るような人じゃ ありません。

それだけは分かって下さい。お願い します。

お話中にすみませんでした」

と、出来るだけトゲのない口調で伝 えるとそっと頭を下げ、その場を後 にした。

メイを守れる人間になりたい。

“昔の――リョウの時と同じ過ちは 繰り返さない……!!”

< 167 / 777 >

この作品をシェア

pagetop