幸せまでの距離
ミズキの家族がメイを養子に迎えた ことは、養子縁組から2日も経たな いうちに近所の噂になった。

人の噂も75日という言葉がある が、それは全くのウソだと思い知ら される。

ミズキが家を出て駅まで続くアス ファルトの歩道を歩いていると、た いてい何人かの顔見知りとすれ違い 挨拶を交わすのだが、皆、腫(は) れ物に触るような目でミズキを見や る。

弟のリョウが自ら命を断ったあの時 も、3ヶ月以上あれこれと噂を広め られたが、今回の件も相当だ。

『メイは、大成(ミズキの父)と他 所(よそ)の女との間にできた子供 なのではないのか』という、ひどい 憶測までされる始末。

春の清々しい風に頬を緩めたのもつ かの間。

今日もミズキは、そんな心ない噂を 察知し神経を尖(とが)らせた。

家庭ゴミを捨てるためにゴミ収集場 所に来た近所の主婦4人が、ミズキ を指さしてコソコソ話をしている。

会話の内容までは聞こえないが、人 はやましいことがあると無意識のう ちに声をひそめるもの。

以前リョウが亡くなった時の経験も あり、ミズキはその主婦達が何を 言っているのか、だいたい想像でき た。

< 166 / 777 >

この作品をシェア

pagetop