幸せまでの距離

子供の心は柔軟で周りに染められ やすい。

だからこそ弱く、純粋であり、凶 器に変わる可能性もある。

周囲の人間……主に《親・保護 者》といった存在にどう育てられ るかが、生まれてきた子供の人格 形成のカギをにぎっている。

もちろん子供は、親以外の人間と も関わるし、少なからずそういっ た人々に影響されるもの。

しかし、基本は家庭環境にある。

壊れた大人によって精神を壊され た子供は、何を頼りに生きていけ ばいいのだろう。

成長しても、心の奥に染み付いた 汚いものの手放し方が、分からな い。

ゆえに、周囲を巻き込み暴動を起 こしたり、他人を傷つけることで 己を保ったり、一人自分の殻に閉 じこもる傾向が強くなると言われ ている。

絶望という名の海に放り出され、 ひとすじの光すら見えなくなっ た。

“子供の頃、味方になってくれる 大人が身近に一人でもいたら、私 はリクの立場や性格を理解できた の?”

家を飛び出したメイは、行く当て もなく夜道をふらつき、死角の多 い公園の茂みに身を潜めていた。

歩くことにも疲れ、ふと頭上を見 上げると、月の光が木の葉のすき 間をすり抜けメイの顔を照らして いる。

それがやけに不気味に感じられ た。

孤独な夜を思い出さずにはいられ ない。

メイは月光が苦手だった。
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