幸せまでの距離

メイが小学4年生の頃、彼女の両親は離婚した。

一言で語れぬすれ違いと溝が重なったゆえに至った別れだったが、父親が家を出る形で離婚は成立。

残された一軒家と土地はメイの母親·翔子の物となった。


しかし翔子はその後そこには住まず、土地を売り、今までの生活を捨てるように隣町へ引っ越し借家を借りることにした。


苦痛でしかなかった結婚生活を手放した翔子の元に残ったのは、育ち盛りであり翔子にそっくりな一人娘·メイと、土地を売って得た財産。

“これだけあれば、しばらく遊んで暮らせそうね”

食事もろくに取っていない、骨が浮き出たメイの脇腹にタバコの火を押し付けながら、翔子は通帳を見てニヤリと笑んだ。

娘の泣き叫ぶ声が耳触りだ。

「っるさいな!

こんなことになったのはアンタのせいなんだからね!!」

崩壊していた夫婦生活の中で蓄積されたフラストレーションを発散するかのように、今度はビールジョッキを片手に、その少ない中身をメイに勢いよく浴びせる。

涙のしょっぱさと酒の苦みが、メイの口の中に広がった。

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