幸せまでの距離

18年間、荒れた母親の元で不安定な暮らしをしてきたメイも、星崎家の娘になってからは規則正しい生活を送っていた。

サボりがちだった学校にも通うようになり、

万引き常習犯だったけれど、今は星崎家の両親から与えられるお小遣いで品物を購入している。


いつも物事を否定的、あるいは絶望的にしか考えてこなかったメイも、そうしてあたたかい家庭に身をおいたことで、丸くなりつつあった。

そんな風に良い方向に変わってゆくメイを見て、リクは心底喜びを感じていた。

だけど、長年持ち続けてきたメイへの恋心を、メイに受け入れてもらえたと知って衝撃的でもある。

「メイ。一回でいいから、好きって言ってくれない?」

メイの口からもっと恋の言葉を聞き出したくて、照れながらそんなことをお願いしてしまう。

「私そーいうの無理」

案の定、メイにはスッパリ断られてしまった。

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