幸せまでの距離

笹原は重々しいため息と共にうな ずく。

「大人もそうだけど、中高生にも 抱えきれないほどの悩みがある。

精神的に成熟している人ならば、 ある程度嫌な出来事を流したり、 感情をごまかしたりして自分を守 ることが出来るかもしれないけ ど、そうできない人もたくさんい る。

人生経験の浅い若い人は、特にそ う……。

彼らはあまり意識していないかも しれないけど、全ての物事を真っ 正面からまともに受け止め、傷つ いたり、怒ったり、悩んだりす る。

そういった傷を治せないまま過ご してしまうと、大人になってから 重度の精神疾患を患(わずら)う 場合もある。

そうなると、社会に出ることが難 しくなったり、人間関係にも支障 をきたしてしまう。

輝かしい未来を生きるためにも、 出来れば今のうちに、彼らの心の ケアをしてあげたいというのが、 本音かな」

そこまで話すと、笹原は紅茶を一 口飲んだ。

「星崎さんも、臨床心理士の資格 を取るため院(大学院)まで行く んだったね。

講義は楽しい?」

先輩然とした、たくましくも柔ら かい口調で笹原は訊いた。

「はい。統計学は難しくもありま すけど、興味あることを学べるの で、毎日が充実してます。

先は長いですけど、将来は先生の ようなカウンセリングのお仕事に 就きたいです。

絶対あきらめません」

「星崎さんの決意はかたいね」

笹原は嬉しそうに笑顔を浮かべ る。
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