幸せまでの距離

メイは思い出した。

カナデのメールを見た時、リクからも メールが届いていたことを。

でも、まだ、リクのメールは見ていな い。


スイーツ販売イベント初日も、終盤を迎 えた。

デパート内のざわつきを見て、リクは穏 やかに言う。

「すごい人だな。

メイの先輩、パティシエなんだって?

昨日、テレビのニュースで宣伝してた。

俺も、メイの作ったケーキ食べたくて来 ちゃった」

「ふーん……。そう」

どんな反応をしていいか分からず、メイ はうつむくことしかできなかった。

なぜリクは、この間のことを気にしてい ないのだろう?

メイにはそれが分からなかった。

リクと真っ正面から向き合いたい。

そう決めたのに、いざ本人を前にする と、メイは逃げ腰になってしまう。


それだけでなく、今は先を急ぎたい。

メイの気が他にいっていることに気付 き、リクは尋ねた。

「……何かあった?」

「クラスの女に、会いに行く。

今日、連絡なく休んだヤツがいる……」

「……友達?」

“カナデは、私の、友達……?”

リクの質問に、深い意味などないだろ う。

だがメイは、考えずにはいられなかっ た。

自分にとって、カナデの存在が何なの か、を。

「……わかんない。

でもアイツ、変なメールよこしてきたか ら……」

それだけ言い、メイは更衣室に戻ろうと する。


落ち着きのない彼女を見て、リクはただ 事ではないと感じた。

「俺も一緒に行く……!」


着替えを済ませたメイは、リクと共に、 心当たりのある場所に走った。
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