幸せまでの距離

デパートの外は、地熱であたたかかっ た。

夕焼けに染まるアスファルトには、イベ ント会場ほど、人の姿はない。

普段と変わりない、ゆったりした足取り で歩く人々。


運動は嫌いだし、走るのも好きではな い。

けれど、メイは走った。

彼女の横顔は、ひどく思いつめているよ うに見える。

メイのペースに合わせて横を走るリク は、メイを心配した。

彼女は昔、幼稚園の運動会で無理して走 り、派手にころんでヒザに大きな傷を 作ったことがあるのだ。

「そんなに走って、大丈夫?

メイ、走るの苦手じゃ……」

「好きでこんなことしない……。

でも、人の命がかかってる……!

もう、嫌なんだ。

自分のせいで、知り合いに死なれるの は……!」

息切れしつつも、メイは言った。

「私は……。カナデの痛みを分かってな かったかもしれない……。

いろいろそばで、話聞いてたのに…!」

足を止めないまま、メイは持ってきた バックの中を探ってケータイを取り出 し、カナデのメールをリクに見せた。

「これ……!!」

リクは目を見開き、メイを見つめる。

「アイツ、死ぬ気だ。

そんなメール送ってくるくらい、追い詰 められてるんだ。

誰かが行かないと、本当に……!」


カナデが行きそうな場所は、ひとつしか ない。

メイは全力でそこを目指した。

大通りの赤信号を無視する。

メイ達を引きそうになった車の運転手に クラクションを鳴らされながらも、メイ はカナデの元に走る。

必死なメイに、リクの胸は熱くなった。

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