家族灯
不快なものたち
両親が離婚をした時、私は心のどこかでほっとしていたかもしれない。



私が21歳、兄が26歳、妹が17歳の時。母から離婚の話を聞いて間もなく、私たちは小さなぼろい平屋に引っ越すことに決めた。

今まで暮らしていた家から毎日少しずつ私たちの荷物を運んだ。
物が無くなりだんだん広くなっていく部屋は、何だか他人の家みたいに思えた。

父は母に「出ていけ」と言ったそうだ。
夜中に帰ってきて朝早く仕事に行っていた父。
仕事に行っていただけではないことも知っていた。


香水の匂い。
携帯の呼び出し音。
母が父に買った覚えのない、変な柄のセーター。

私たちの家に入りこんできたそれらの不快な存在が、母を激しく苛立たせた。

その「不快なものたち」によって作り上げられる気配が、母を追いつめた。
そう思った。
父を軽蔑した。
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