家族灯
引っ越しは順調に進んで、私たち兄妹の部屋は三つとも、きれいにからっぽになった。
私は自分の部屋の窓から、庭を見下ろす。
庭の周りを囲むようにキンモクセイの木が生えていて
学校から帰ってくるとき、うちの近くまで来るとキンモクセイの花の匂いがしていたことを思い出す。
むせかえるような甘い匂い。





私たちは感傷的にはならなかった。むしろ明るい引っ越しだった。
「出ていかされる」
というよりも
「自分たちの意志で出ていく」という感じだった。


父だけを置いて、私たち四人は一緒に出ていく。

私たちは父に捨てられたんじゃない、
私たちが父を捨てたのだ。
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