きのこうどん
それを見た瞬間急に右側の頬がかゆくなって右手を動かそうとした。
 
隣で夢中になる彼女はずっと人形劇を写し手を放してくれそうな気配はない。
 
横顔だけがスポットライトの分光に照らされて青く光っていた。
 
顔が痒い。右頬が痒い。
それなのに右手はしっかりと
ちこが押さえている。
 
本当は手を振りほどくことも
できたのかもしれない。
 
だけど彼女を見てたら
今、無理に離すのは
悪いかなって思ったんだ。
 
それに
手を放さなかったのは
少しだけ居心地の良さを感じ
ボクもそれを望んでいたからだと思う。

結局、体を傾けながら
漫画の猿が「ウキキ」なんて言うポーズのように左手を上から自分の首に回し器用にかいて。
 
すると、見えていたのかちこが言うんだ。

「アキト君。何してるの?」
 
ボクの答えは決まっている。
 
「え?痒いからかいてるの。」
 
「面白い掻き方するんだね」
 
だとさ。
そう言って笑ってた。
 
< 19 / 92 >

この作品をシェア

pagetop