きのこうどん
小学生くらいの頃はよく一緒に遊んだ仲だ。
多分、ボクの中で一番古い友達だ。
 
「どした?アキが職員室に呼び出しだなんて珍しいな。何悪いことしたんだ?昨日バイトしてたの見つかった?」

ちなみにボクが通っているこの学園、バイト禁止の進学校である。

「ははは。そのパターンで来たか。いや、しばらく学校来ないからさ。その連絡。」

彼はボクの母方のじいちゃんのことを知っている唯一の友達だ。

「じいちゃん、いよいよやべえのよ。明日から学校来んし、ヨロシク!」

「そうなん?なんて言っていいか分からないけど…。」

「大丈夫。本人もよくわかってないから。」
 
本当に、別れってのはよく分からない。
 
実は、今日 
この日が来るまでに何度も涙した。
 
普段は何も考えなかったけど
いざいなくなるって考えると悲しいもは悲しい。
 
にもかかわらず、まだ、どこか他人事で
まだ、元気な姿で帰ってくるのでは?とか
まだ、別人のことなんじゃないか?
とか思ってる自分もここにいる。
 
現実がまるで映画のワンシーンを見ているような感覚。
胸にもやもやと暗雲が立ち込めるもののどこかにうっすらと日が射しハッピーエンドになる映画のワンシーンを思い浮かべていた。

それはまるで、遠い昔、誰かと手をつなぎながら見た夕焼け空に光る一番星のようなもので、淡く、今にも消え入りそうな弱い希望。

もしかしたらこれは全てが、一年も前から全てが、本当に全てが、悪い夢なのではないかと思っている自分が確かにそこにいて、治って欲しい。完全回復して欲しい。
と、願っていた。
 
それでも、その光を見つめようとはしないボクも又確実にここにいる。
分かっている。分かっているんだ。
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