きのこうどん

【それでも僕らは生きていく】

病室に戻ると、母さんが爺ちゃんの弟と話していた。
廊下にこぼれる声が爺ちゃんを思わせた。
少しだけ爺ちゃんを思いだす。
まだ、生きてるのに。

病室を覗くと爺ちゃんが背中を上げながら呼吸をしていた。
意識のない爺ちゃんが深呼吸を繰り返し繰り返し行っている。
そうしないと息ができないくらい弱ってる。


「爺ちゃん。ありがとう。」


誰かがそう言っていた。
もう、誰の目にも明らかだったのだろう。
ボクは、人の死に初めて遭遇する。
だが、ボクもそう思った。

だからかもしれない。
爺ちゃんの顔が見えないように爺ちゃんの弟の後ろに隠れた。
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