きのこうどん
「もうちょっとだけ息をして」

ばあちゃんが、爺ちゃんの手を握りながら言った。

「爺ちゃん。ありがとう。」

母さんが言った。

「爺ちゃん。」

ボクは人の背に隠れて黙って時間が過ぎるのを待ってるだけだった。

かろうじて見えるのは
爺ちゃんの枕元にある真っ白な壁紙だけ。

みんな思い思いにじいちゃんに声をかける。

「おなかいっぱい!」

「お?間に合ったか。」

実と父でさえも間に合い何かを耳元で囁く。

みんな爺ちゃんに駆け寄るけどボクはその輪の中には入れなかった。
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