テディベアの彼女
「ぷはあ!」


諦めて、詰めていた息を吐く。

はあ、はあ、と一瞬だけ荒い呼吸をして
呼吸を安定させる。

そこでやっとトンネルを抜けた。

絶対一分以上あったよ、このトンネル…。



「ねぇ、お父さん。後…」


後どれくらいで着くの?


続けようとした言葉は、

右側に見えた動物によって遮られた。


「え?あ、のさ。あれ、って…」


びっくりしている私の横に
お母さんの顔がにゅっと出てくる。


「あら、鹿じゃない。三匹もいるわね。」


鹿、なんだ。

あれが、鹿。


「か、わいい…。」


色は一色しかないって思っていたけれど、
実際に見ると、濃かったり薄かったり
人間と同じで、色々いるみたい。

ばいばい、と小さく手を振って
同時に
車にひかれないようにね、と
小さな鹿二匹と、
大きな鹿一匹に向かって呟いた。
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