テディベアの彼女
長い話の間、有人さんはどこか遠くの国の昔話をするみたいに淡々とした語りを続けていた。
けれど、今の有人さんは、


「僕についたんだ、妖が。」


「…え?」


「僕の心の隙間をみつけて入り込んだんだ。

陰陽師の力を持った妖は強くなりすぎた。
妖は、封印するしかなくなった。」


有人さんの指が白い。
淡々とした語りはいつの間にか消えていて、苦しそうな声が残っている。


「――僕が、綾ちゃんを殺したんだよ。」



…軽く言おうとして、失敗してますよ、有人さん。

光のない暗い瞳は、今にも泣きたいって訴えてる。

見ていて痛々しいくらいの悲しさをたたえた笑みも、
僕のせいだ、僕が殺したんだ、
そう訴えている。

だから。


「そっか。」


それだけ言って抱きしめた。

震える肩に顎をのせて、
背中にしっかり手をまわす。

辛かったね、
泣いてもいいんだよ。

その気持ちが伝わるように。


確信した。

幹斉だけじゃない。
有人さんも、そしてきっと一族の人も、
綾さんが亡くなった日から動けずにいるんだ…。

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