テディベアの彼女
幹斉が抱きしめてくれていた。
そうだ、だから。
「今までにないくらい強大な力で、自分の意識を乗っ取ろうとする妖や、
このままどこに行くのかわからない恐怖。
怖くて怖くて震えがとまらなくて、壊れてしまったんじゃないかなんて思っていたくらいだった。
それなのに、幹斉の体温を感じて、幹斉の匂いに包まれて、幹斉の声が耳に響いて。
なんでかわからないけど、それに安心した私は、いつの間にか震えも恐怖もどっかにいっていて。
幸せを感じたまま、綾さんは封印されました。」
そして、幹斉に良と名付けられた霊である私が、ここに来たことで、眠っていた綾の意識が呼び起こされたのだ。
「綾さんは、幹斉にも有人さんにも……ここの一族のみなさんが、幸せになって欲しいと願っています。」
だからどうか、
忘れなくてもいい。
でも前を向いて歩いていってほしい。
「有人さん。」
のろのろと顔をあげる有人さんが、なんだか可笑しくて、自然と顔が緩んだ。