夜籠もりの下弦は恋を知る
そんな日に限って、待ち人はやって来るものである。
「輔子…」
重衡は足音を忍ばせ、愛しい妻の寝所へ訪れた。
「眠ってしまわれたのですか…?」
物音一つしない暗い部屋に足を踏み入れ、妻を探す。
「う…ん?しげ、ひら様…?」
眠りかけていた輔子はぼんやりしながら身体を起こした。
「私の、北の方」
暗闇の中、重衡がそっと彼女を抱き寄せる。
「待っていては下さらなかったのですか?つれない方ですね」
この言葉にカチーンときた輔子は、一気に頭を覚醒させた。
「し、重衡様こそ!!私によくそのようなことをおっしゃれますね!!」
「輔子…?」
「つれないのはどちらです!?私は、昨夜もその前も…ずっとずっと、お待ち申しておりましたのに…!」