夜籠もりの下弦は恋を知る
「輔子、それは…」
何か言おうとする重衡を、彼女は言葉で突き放した。
「重衡様は私のことなど、愛していらっしゃらないのでしょう…?」
「なっ…!?」
「いえ、たとえ愛していらっしゃったとしても、他の女房達と同列ですもの。貴方様の私への愛など、所詮はその程度のものでしかないのですよ」
(重衡様の妻になれても、それは形だけ)
――貴方の特別になりたい…
そんな儚い思いは雲や霞を掴もうとするようなもので…。
「…今宵はお帰り下さいませ」
「嫌です…」
なお自分を抱きしめて離さない夫に、輔子は声を荒げた。
「お帰り下さいませ!!!!」
「嫌です!!!!!」
重衡も負けじと食らいつく。
「今宵、貴女を抱きます」