夜籠もりの下弦は恋を知る
「これは…佐殿が書いたのか?」
「そうです。そのような美しい文字、彼女以外有り得ませぬ」
さりげなく自分の妻を褒めることを忘れない。
「この歌の意味は、わかっているのだろう?」
「はい。…恋しい男を待っている夜は長すぎて、とても辛いということを当の待ち人は知らないでしょう、という…少し恨みがましい歌です」
「わかっているなら話は早いだろう。そなたが浮気せずに佐殿のもとに通えばいいだけのことだ」
このアドバイスを聞いて、重衡は深い溜息をついた。
「そこなのです兄上。私は自分が輔子に並々ならぬ情欲を抱いていると理解しています。毎夜通えば、絶対に毎夜掻き抱いてしまう自信があるのです」
……何だ?のろけ話か?
知盛の心境は微妙だ。