夜籠もりの下弦は恋を知る


 「今日も俺の家に寄りませんか?」

食事時に彼が提示したお誘いのせいで、只今、こんなことになっている。



「うわ~!可愛いな!ホントにいいの!?」

「ええ、どうぞどうぞ」

揚羽が生まれて間もない子犬を抱っこする。

ここは重衡の家。

昨日は気づかなかったが、ここの家では犬を飼っていた。

その犬が子犬を産んだため、それを引き取ってくれる人を探しているということだ。

「私、前から一匹ほしかったのよね~」

そう言った揚羽が引き取る決心をしてくれたため、放課後三人で平野家に向かったというわけである。


「井上黒(イノウエグロ)は大人しい性格なので、その子犬ものんびり屋さんです。飼いやすいんじゃないかな」

子犬の母親であるラブラドールレトリバーを見ながら重衡が言った。


< 93 / 173 >

この作品をシェア

pagetop