夜籠もりの下弦は恋を知る
「今日も俺の家に寄りませんか?」
食事時に彼が提示したお誘いのせいで、只今、こんなことになっている。
「うわ~!可愛いな!ホントにいいの!?」
「ええ、どうぞどうぞ」
揚羽が生まれて間もない子犬を抱っこする。
ここは重衡の家。
昨日は気づかなかったが、ここの家では犬を飼っていた。
その犬が子犬を産んだため、それを引き取ってくれる人を探しているということだ。
「私、前から一匹ほしかったのよね~」
そう言った揚羽が引き取る決心をしてくれたため、放課後三人で平野家に向かったというわけである。
「井上黒(イノウエグロ)は大人しい性格なので、その子犬ものんびり屋さんです。飼いやすいんじゃないかな」
子犬の母親であるラブラドールレトリバーを見ながら重衡が言った。