恋はいっぽから!
莉奈がメールを送信するのを確認すると……
「雪降ってるし…、お前らも気をつけて帰れよ?」
ニシハルは、車へと向かって行った。
「……先生っ!」
途端に……
莉奈が声を上げる。
「こんなことがあった後です、せめて私くらいは…送ってくれないんですか?」
彼女が指さすのは……
ベ〇ツの助手席。
……?!
莉奈……?
「………。三船のは…誤解だったろ?それに…」
……『それに』…?
「そこに乗せるのは、特別な女だけ。」
奴は妖艶に……ニヤっと笑う。
奴は…反応を楽しんでるのか、
黙りこんだ俺達を見ながら、今度はからからと笑い出して…。
「…冗談だよ。荷物いっぱいあるし、ちらかってるから乗せたくないだけ。少しは運動しろよー、帰宅部っ!」
「…………。先生。さっきいっぽが乗ったのは…、助手席ですよ。」
「………ああ、そう。」
「それも…『特別』ってことなんですかね?」
「……さあ…。」
「……気になりますか?」
「まさか。」
「………そうですか…。」
莉奈はまだ何か言いたい気だったけれど……。
後は、口を噤んでしまった。
「……じゃ、気をつけて帰れよ?」
ニシハルはさっさと車に乗り込んで……
運転席の窓から手だけをひらつかせて……
走り去って行った。
あの車の助手席に乗れるのは……
特別な女……?
暗に、三船だと言いた気な……。
「つまらないわね…。」
車が見えなくなる頃に……
莉奈はボソッと呟く。
「……どうした?」
「ハッパ掛けたのに…動じなかった。」
惚けたふりして……、
なんだ…莉奈、お前も気づいて……?
「…アンタも結局いっぽに甘いんだから。」
「…は?」
「いっぽの為でしょう?ニシハル呼んだの。」
「…………。」