オレンジ
上手に言葉にはできないけど、あたしはやっぱり彼をちゃんと好きなんだと思う。
彼も、そう言ってくれている。
怖くても、信じてみるしかない。
どれだけ苦手だとしても、彼を好きだと思う以上は、あたしはこの恋をいまさら投げ出すことなんかできない。
自分の知らないところで膨れ上がりつつある気持ちとの向き合い方を、少しずつ身につけていくしか、ない。
「やば、もう着いたみたい」
じゃあね、と、1000円札をあたしに手渡し、ヒールをカツカツ鳴らしながら店を出る陽菜の背中を見送る。
その足どりは軽く、今の陽菜の気持ちを思うと自然とあたしも笑顔になった。
あたしも、彼に会いたくなってしまう。
次のデートは、明後日だ。
ゆっくりとウーロン茶を飲み干してから、店を出た。
今日も、電話くれたらいいな。
まだ、じりじりとあたりを焦がすように照りつける太陽を見上げた。
この夏が終わるまでに、あといくつの想い出をつくれるだろう。
沢山、できるといいな。
そんなことを考えながら家路についた。