オレンジ
deep night〜takuma〜

「結構、お酒強いですよね?」

すっかり彩乃ちゃんに懐いたショコラが、ちゃっかり彼女の膝の上で身体を丸めている。

「そうかな。普通だよ」

そう言って俺は、三本目のビールを飲み干すとアルミ缶をくしゃっと潰す。
まだ19歳になったばかりだと言う彼女の前で、俺はいつも酒の飲み方に困る。
今時未成年と言っても、19にもなったらちょっとくらい飲んだことはあるんじゃないかと思ったが、彼女は本当に一滴たりとも飲んだことはないらしい。
だから俺も、勧めたりはしない。

「あたしも飲めたらな。一緒に付き合えるのに」

彼女はいつもコーラを飲みながら、こうして俺の晩酌に付き合ってくれる。

「もう少ししたら、飲めるっしょ。ハタチになったら、付き合ってよ」
「…はい」
「あーほら、また」
「…あ」

俺が指摘すると、彼女は「しまった」という顔で俺を見た。

付き合い始めて、そろそろ二ヶ月が経つ。
デートも、そろそろ何回目とかいう意識をしない程度には回数を重ねてきた。
と言っても、外に出かけたのはそのうち半分くらいだ。
あとの半分はこうして俺の部屋に彼女が来て、レンタルしてきた映画を観たり、ゲームをしたりして過ごしている。
最初のうちこそ、俺も気を遣って酒は控えていたけど、ビールが箱買いでストックしてあるのを見つけた彼女が、飲んでいいよと言ってくれたのでそうしている。

彼女がうちに来るのは、大抵俺の仕事が終わってからの夜なので、晩酌が習慣になっていた俺としてはありがたかった。



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