オレンジ
手元に戻ってきたばかりの携帯の液晶をタッチして、履歴の中から陽菜の名前を探す。
陽菜は3コールで出た。

「もしもし陽菜!戻ってきたよ、携帯!」
「え、うっそ!彩乃?あたし今、もしかして拾った例の男がかけてきたかと思ってちょっとだけ緊張してたんだけど」
「えーやだごめん。でね、その例の男が返しに来てくれて」
「…はい?」

間の抜けた声を出す陽菜に、あたしは公衆電話の前で起きた出来事を一部始終説明する。

ようやく話し終えると、受話器の向こうから、これでもかというくらい長いため息が聞こえた。

「ツッコミどころが満載すぎるんですけどー?」
「え、うそ。なにが?」
「何から何まで!!」

陽菜の声のボリュームが一段階アップした。

「まずさ、なんでそいつはそこにいたの?どこであんたの携帯拾って、どこであんたと電話で話して、どうしてあんたが駅の公衆電話にいるってわかったの?」
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