オレンジ
「陽菜は、考えないの?そういうの」
「え?まぁ、多少はあるけど、そこまでは意識してないかもしんないなぁ」
あっけらかんと言い放つ陽菜に、あたしはほんのささやかな嫉妬を覚える。
それは陽菜に、絶対的な自信があるからだ。
自分のファッションセンスにはもちろん、自分が彼に愛されているという自信が。
その両方に、自信なんて持てないあたしは頑張るしかないのだ。
陽菜は背が高いことがコンプレックスだと口では言うけれど、あたしは知っている。
そのモデル体型を本当は自慢に思っているということを。
その証拠に、陽菜はいつだって7センチ以上のヒールを履いている。
身長がコンプレックスなら、絶対に履かない筈だ。
本当は、脚が痛くなるから履きたくもないヒールを無理して履いているあたしとは、大違い。
あたしはチビだから、ヒールじゃないと全身のバランスが悪いのだ。
「あ、あの店入ってみない?喉渇いちゃった」
陽菜は明治通り沿いにひっそり佇むカフェの前で立ち止まる。
「うん、そうだね」