オレンジ

めっきり風が冷たくなってきたので、陽菜と一緒に、秋物を調達しようと渋谷に集合している日曜日。

カットソー1枚買うのでさえ、
「拓真はこういう感じ、好きかな」なんて考えるのがもう癖になっている。
もちろん、流行や自分に似合うかどうかは考えるし、自分の好みだってある。
だけど、オシャレ命!ってわけでもなく、オリジナルのファッション魂的なものも持たないあたしにとっては、「拓真に可愛いと思ってもらえるか否か」こそが、服選びの上での最重要項目だ。


「なんか彩乃、服の好み変わった?」
「え?そうかな」
「うん。最近思ってたんだよね。そんな、めちゃくちゃ変わったとかじゃないけど。少し大人っぽくなった気がする」
「ほんとに?やった」
「あ、そっか。拓真くんの好み?」
「うーん…」

そうだね、と肯定するのは気恥ずかしく、あたしは語尾を濁す。

完全に狙ってる、というわけではないけれど、無意識にそういう選び方をしている自分がいる。



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